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謎の本店ラーメン 中編

後日さらなる驚きが待っていた。
また別のその手の店のメニューに「本店ラーメン」を発見したのだ。
写真を見る限り内容も同じ感じである。
そしてまた別の店でも発見した。
「確かにその手の店でそのメニューを発見して気になっていた」という報告も数人から得る事ができた。
どうもこの「本店ラーメン」なる物がこの大陸系台湾料理店連合の定番メニューになりつつあるようなのである。

前回も書いたようにこれらの店はチェーン店というわけでは無いはずなのだが、言わば擬似チェーン店的に運営されている印象がある。
具体的にどういう形で組織化されているのかはわからないが、大陸からの出稼ぎ飲食業従事者のコミュニティーがあり、それを束ねる個人なり組織がある印象である。
メニューやレシピも共有されている事は客観的にもあきらかだから、組織からのトップダウンなのか現場からのボトムアップなのかはわからないが時に新しいメニューが生まれ、ヒットするようならそれが多くの店で共有されるという事は不思議では無い。
この手の店は(オペレーション的にも仕方の無い事だが)麺類の商品力が弱くなりがちだから、そこに少しでもオリジナリティーとインパクトのある新商品を投入したいというのも分かる。
そしてそのために各店にすでにある食材のみを使ってあのようなラーメンが創作された事も、まあ、分かりたくないが分かる。
分からないのはただ一つ。
なぜそれを「本店ラーメン」と名付けたのか??

まず私は一つの可能性を考えた。
中国には各地方に様々な麺料理がある。
そして当然その一つ一つに名前が付いている。
それぞれが様々な由来を持ち、ユニークでファニーな「面白ネーム」も少なくない。
実はそんな中に日本では知られていない「本店麺」という固有の麺料理があるのではないか。
私はさっそくグーグル先生にご相談したのだが、とりあえず検索トップは二郎三田本店であった。
以下どう考えても関係ない検索結果がズラズラと続く。
ノイズを排すべく色々工夫したが無駄であった。
あきらめて蔵書の中から数冊の中国地方料理や麺料理に関する本を念のためあたってみたが、それらしきものは一切無かった。
この程度で中国にはそのような麺料理は存在しない、と言い切るのは早計かもしれないが、少なくともあったとしても相当にマイナーな料理である事は間違いない。
そしてかの組織には、知る人ぞ知る本場のマイナー料理を日本に紹介しようというメンタリティは、創成期にはともかくとして現在においては全く無いと言っていい。

メンタリティという意味ではむしろ「彼らはすぐバレる嘘を平気でつく」というその部分こそがこの謎を解く鍵になるのではないか、と次に私は考えた。
無礼を承知で言うならばそもそもが嘘で塗り固められた所からスタートしている業態である。
中国なのに台湾と嘘を吐き、台湾料理など無いのに台湾料理店と嘘を吐く。
こう書くと極悪人のようだが、そもそもこれは日本の飲食店に昔も今も変わらぬメンタリティと基本的には同種の物である。
彼らは郷に入って郷に従ったとも言える。
いやいや日本人は決してそんな恥知らずな事はしない、という反論もあるかも知れないが、私は今から僅か7文字でその反論を封殺してみせよう。
いいですか?

「ミラノ風ドリア」

はい論破。(注・煽ってません)

根本に帰って、ある店で「本店ラーメン」という文字列を見たら前回の私と同様その店には別で本店があると考えるのが普通であろう。
それはもちろんすぐバレる嘘なのだが、少なくとも嘘を吐くからにはその嘘にメリットがなければいけない。
その店に本店が存在するというミスリードを誘う事に、はたしてどんなメリットがあるのだろうか。

系列店があったりチェーン店であったりする事をアピールするメリットは安心感である。
そこにしかない個人店を信用するのは実はちょっとした賭けでもあるが、チェーン店ならばそれは既に幅広く一定の信頼を得た店という安心感が生まれる。
その反面、最近では何かとチェーン店に対する風当たりが強いという現実もある。
儲け主義のチェーン店は全く信用ならないが個人店では職人の良心が未だ生きているはずだ、という少しの真実とたくさんの幻想の入り混じったイメージは現代において広く共有されていると言っていい。
だから最近は大資本が経営しているにもかかわらず、それを隠してあたかも個人店のように演出するケースも少なくない。
つまりチェーン店である事をアピールするにはメリットとデメリットの両面があり、どちらを選択するかはその業態やターゲット客層によるという事だ。
大陸系台湾料理店の場合はチェーン店である事をアピールするメリットの方を取った(まあ、嘘なんだけどさ)と考えると「本店ラーメン」の存在意義という謎は一応説明が付く。

そしてそう考えると実はこれはなかなか考えられた戦略なのではないかという気がしてくる。
先にも書いたように彼らは擬似チェーン店的に運営されているから、極端な話全店を同じ店名にしてそれぞれ地域で**店とでもしておけば簡単にチェーン店アピールが可能である。(まあ、嘘なんだけどさ)
しかしそれにはまた別のデメリットもある。
ちょっと前のペッパーランチ、最近のサイゼリヤでも話題になったが、ある店で単発的に起こった不祥事が全店のイメージを大きく落とすリスクがあるのだ。
不祥事とまで行かなくてもどこかの店がもし極端にマズい物を提供するなどして評判と信頼を失墜させたらそれは他の店にも簡単に飛び火する。
いずれのケースもそれは本部の管理責任なのだが、彼らの場合は厳密な意味での権限のある本部があるわけではないから責任も何もそもそも管理しようが無いのだ。

その点「本店」というバーチャル系列店なら不祥事など起きようもない。
当たり前である。
存在しない店に不祥事は起きないし悪評も立ちようがない。
それでいて単なる個人店ではない安心感、というメリット「だけ」を享受できるのである。

まあ、嘘なんだけどね。






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プロフィール

イナダシュンスケ

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
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