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「魚+臭み消し」の料理 その1 ディルとフェンネル

ロンドンににある有名な老舗高級百貨店、ハロッズを訪れた事があった。
もちろんその食料品売り場が主な目的である。
その時最も印象的だったのは鮮魚売り場だった。
畳2枚分くらいの斜めの陳列台に、様々な魚介類が実に美しく並べられていた。
ある物は放射状に、ある物は波打つように、配色やグラデーションにも気を遣い、もはや芸術的と言っても過言ではなかった
少なくとも当時、日本では見た事がないような素晴らしいディスプレイだった。
が、しかし。
その美しさ以上に驚いた事があった。
とにかく臭いのである。
単に磯臭いとか生臭いというだけではない。
日本人的感覚で言えばはっきり言ってそれは腐敗臭であった。
それが売り場周辺一帯に漂っていた。
いくら見た目が美しくてもこれを買いたいと思う日本人はいるまいと思った。
魚の鮮度に関する感覚がここまで違うのかというのはちょっとした驚きだった。

南インドケララ州は海に面しており魚料理が有名だ。
州都コチの海岸線に並ぶフィッシングネットは観光名所でもある。
そんなコチの魚市場を訪れた事がある。
すぐそこに海が見える絶好のロケーションであり、さぞ新鮮な魚が並んでいるのであろうと期待した。
しかし。
そこもやはり相当に臭かった。
確かにおそらくほとんどの魚はその日の朝、数時間前に水揚げされたものばかりだったのかもしれない。
しかしそれらは、午前中から普通に30度を超える南国の気温の中で、冷蔵庫も氷もなくただ野ざらしだったのである。
サワラ、アジ、サバ、カツオ、マナガツオなど意外と見慣れた魚が並んではいたが、少なくともそれを刺身で食べる勇気はない、という感じであった。
まあ誰も刺身なんかでは食べないからいいといえばいいのかもしれないが。

日本にいると、買ってきた魚を刺身や塩焼きなどでシンプルに食べるのが当たり前になりすぎてついつい忘れがちだが、食料としての魚というのは実はそうとう臭いのがむしろ当たり前なのである。
冷蔵庫も氷もないような時代ならなおさらそうだっただろう。

ベトナムはハーブの国である。
首都ハノイのマーケットストリートでは小道の両側にびっしりと軒を並べる店のそこかしこで、香菜やミント、バジルや大葉などが大きな束で売られていた。
そんな中を歩いていたら、どこからかふいにそれまでそこではあまり嗅いだ事のないハーブの匂いが漂ってきた事があった。
ディルの匂いだ。
匂いを辿っていくと意外なことにそこには魚屋があった。
ディルは野菜や果物の店ではなく、魚と一緒に売られていたのである。
地元の方に聞くとハノイのあたりでは、魚は必ずと言っていいほどディルと一緒に調理されているという。
そして不思議な事に、ディルは魚料理以外ではまず使われる事はないとの事であった。

魚はあっという間に臭くなる。
それは当たり前だが世界中だいたいどこでもそうだ。
だから世界中で、その臭みを消すために様々な工夫がなされた。
それがそれぞれの地域で様々に個性的な魚料理を生んだのだろう。
それはその地域独特のものもあれば離れた土地で不思議とよく似た工夫がなされていることもあるが、いずれにせよ食べるとなるほどなあ、と納得せざるを得ない相性に驚かされざるをえないのが「魚とその臭み消し」の料理だ。

そんな中で私が特に好きなものの一つが「鰯とフェンネル」の料理である。
フェンネルと鰯は、まるでパズルのピースがかちっと合うようにしっくりくる組み合わせの一つだと思う。
有名なものの一つがシチリアのパスタ料理か。
鰯にフェンネルやサフランの香りを効かせ、さらにニンニクや松の実、レーズンなどを合わせる複雑かつ精妙な美味しさは、なかなかこれを食べられるイタリア料理店が日本にはないものの材料さえ揃えば自分で作るのはそう難しいものではない。
ネットにはこのシチリア風鰯とフェンネルのパスタのレシピは信頼できるものがたくさん転がっているのでぜひ探して挑戦してもらいたい。

さてここでは、それとはまた少し違う、材料も手に入りやすく作りかたもさらに簡単なパスタ料理をご紹介しようと思う。
フレッシュなフェンネルは普通のスーパーなどではなかなか手に入りづらいが、これはスパイス売り場なら必ずあるフェンネルシードを使う。
あとは本当にどこにでもある材料だけである。

<イワシとフェンネルシードのスパゲッティ>
(2人前)

・材料

イワシ 4尾
塩・コショウ 適宜

スパゲッティ 200g
水 2000cc
塩 32g

オリーブオイル 100cc
ニンニク 2片
タカノツメ 1本
フェンネルシード 小さじ1
トマト 1個
パセリ 1束

・下準備
イワシは頭を落として手開きにし、中骨を取る。小骨はキニシナイ。
しっかり目に塩コショウし、置いておく。
パスタのお湯を用意する。2リットルに塩32g。1.6%だ。この濃度なら、後から味付けの塩を足す必要はまずない。しょっぱいのが気にならない人は2%、40gまで増やしても良い。正直なところそのくらいの方がパスタ料理としては美味しい。
ニンニクはスライスかみじん切り、トマトは適当にざく切り。湯むきの必要は無い。皮も味のうちだ。
パセリはイタリアンパセリでもいいが、この料理には安くてたっぷり使え、なおかつ風味も強い普通のパセリをお勧めする。手のひらいっぱい、えっ?こんなに?というくらいの量を粗く刻んでおこう。

・調理
①フライパンにオリーブオイルとタカノツメ、ニンニクを入れ、ごく弱火で火にかける。ニンニクは焦がすどころか色がついてもいけない。タカノツメは別に焦げても良い。
②ニンニクにしっかり火が通ったらフェンネルシードを入れ、30秒ほど火を入れる。スパイスの周りにしゅわしゅわと細かい泡が立ち、良い香りがしてくるはずだ。
③ここに下準備したイワシを重ならないように入れる。ソテーするというよりはオイルの中でゆっくり煮るイメージだ。
④2〜3分でイワシにはだいたい火が通る。そうしたら次にトマトも加える。
⑤このタイミングでパスタをゆではじめよう。硬さはお好みだが、袋のゆで時間マイナス2分が推奨だ。
⑥パスタを茹でている間にソースを煮込んで行く。5分を目安にややトマトが崩れ始めたくらいでパスタの茹で汁を少量、30ccほど加えて鍋をゆすり、火を切ってパセリを投入する。これでソースのスタンバイオッケー。
⑦後はゆでたパスタを加え、手早く煽って完成だ。皿に盛ってからレモンを絞ったり、カリカリに炒めたパン粉をトッピングしてもよい。イワシをじゃきじゃき崩しながらパスタと絡めて口いっぱいに頬張れば、最初に100cc(900kcal)もの油を入れた罪悪感など瞬時に吹き飛んでしまうであろう。

どうしても罪悪感が吹き飛びそうに無い場合は、①のオイルを3分の1程度まで減らしても良い。その場合はイワシを煮るときに水を少し足す。ワインを入れたくなるところかもしれないが、こういう料理は水の方が味を引き立てると思う。アクアパッツァやボンゴレビアンコなんかもそうだ。









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イナダシュンスケ

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
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