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自国の食べ物をダサいと思う感覚について

台湾で和食のお店を立ち上げるサポートの仕事をしてた時の話。
お店にはたくさんの若い台湾人アルバイトスタッフがいた。
台湾の若者たちは日本人とぱっと見そんなに変わらないけど、やはりくらべると少し野暮ったいというか地味な印象はあった。
その中に1人、目立って垢抜けた1人のおしゃれボーイがいた。
服や髪型だけでなくカバンや自転車にもお金と気を遣い、趣味はクラブで夜遊び、みたいなタイプである。
その少年は、いつも昼食にコンビニの菓子パンを買って食べていた。

お店は首都台北の街なかにあって、その辺りにはコンビニも日本とそう変わらないくらいたくさんあった。
しかし我々日本人チームは、そこで食べ物を買うことはまずなかった。
なにせ台湾はストリートフード天国である。
点心類や麺、揚げ物や腸詰め、などなど安くて美味しい物がそこら中にいくらでもあるのだ。
我々は毎日嬉々としてそれらを食べまくっていた。

ある時私はそのオシャレボーイに、
どうしてこんなに安くて美味しい物がいくらでもあるこの街でそんなコンビニパンみたいな物ばかりたべるのか、と尋ねた。
コンビニパンはけっして安くない。
そこらの屋台にくらべるとむしろずっと高いと言ってもいいくらいの値段だったからだ。
彼は、なぜそんなあたりまえのことを聞くのだ、とでも言いたげな表情でこう答えた。
「僕たちはあんなもの絶対に食べませんよ。かっこ悪いし。それに味だってコンビニのパンの方がずっと美味しい。」
ずっと美味しい、はさすがにちょっとした強がりなのではと思わなくもなかったが、少なくとも屋台飯がかっこ悪くコンビニパンはかっこいい、という価値観はどうも揺るぎない物のようだった。
私は正直その答えを聞いて、バカだなあ、と思ったし、ナリはでかいが案外子供っぽいなあ、とも思った。
でも同時に、とりあえずいったん伝統的で土着的な物を全て否定した上で、より洗練されたライフスタイルを新しく築き上げようとする若者らしい決意が少し眩しくもあった。

これと似たような、ドイツの若者の話も聞いた事がある。
ドイツの若者、特に女の子はソーセージをあまり食べたがらない、と言うのだ。
その理由は、
「あんなダサいおじさんの食べ物、私たちは食べたくない」
という事らしい。
ソーセージがダサい方の食べ物に分類されるのは日本ではちょっと考えにくい感覚だが、確かに言われてみると、しょっぱくて脂っこくて色合いも地味でしかも酒に合いすぎる、というオヤジフードの条件を完璧すぎるほど満たしている。
日本で言えばモツ煮とかイワシの丸干しとかと同じ事が。
ザワークラウトとマスタードが添えられているというのは日本ではむしろオシャレ側に分類される食べ方とも思えるが、考えたらこれとてイワシにおしんこと大根おろしを添えているような物だ。
ソーセージを嫌うドイツの少女たちが何を食べたがるかと言うと、ピザやハンバーガーだそうである。

インドの同じような話も聞いた。
限られた都会のあくまで富裕層の話かもしれないが、子供たちが「ダールとチャパティ」という最も伝統的でベーシックな食べ物を食べたがらない、と言うのだ。
じゃあその子達が何を好むかと言うと、ケチャップライス、だと言うではないか。
いやいくらダール&チャパティが地味な食べ物とはいえケチャップライスよりはマシではないか、と思ってしまうが、当の子供達にとっては決してそんな事はないわけだ。
この話は、オシャレかダサいか、という価値観とはあまり関係がなさそうなので、純粋に嗜好の話なのであろう。
ドイツのピザとハンバーガーの話と併せて、アメリカンフードの圧倒的な説得力、という意味でも興味深い話ではある。

なにしろ成長の途上にある国の若者がとりあえず自国の伝統的な食べ物に対して否定的な感情を持つ、というのはそれなりに普遍的な現象なのだろうという気はする。
日本だってそんな時期はあったはずだ。
現代の日本人は、若者も含めて、日本食に自信を持っているように見える。
ヘルシーで上品で、世界でも認められた料理として。
その事がはたして幸せな事なのかどうなのかはなんとも言えない気もするが。






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コメント

No title

自国の食べ物をダサいと思う感覚が普遍的であるものとするなら、日本の若者が日本食に自信を持っているということは、日本食が日本の一般的な食生活から離れていっていることを意味するのかもしれませんね。
確かに、もしかしたら幸せなことではないのかもしれないですねえ。

故郷の味は

映画やテレビで観た外国を食事に思い描いているのでしょうね

日本食も思い描かれる料理になったのなら嬉しいのですが、外国での寿司が私的に
「なんじゃこりゃ?」なモノもあり喜んで善いのやら悪いのやら

食べ物での文化交流なのだから喜ぶべきなのでしょうけど

No title

日本でも下町の食堂や居酒屋に若い子はなかなか入らないし
煮物メインの茶色い献立に嫌気がさすのもありがちだし
でもある程度年を重ねてそういうものの良さがしみじみわかる…
みたいなのとはまた別なのですかね。
「日本食」と日常の食事はカテゴリが違うような気がします。

日本の屋台は、衛生的な不安があるので、食べないです。

Re: 故郷の味は

日本食が憧れられる側になったというのはなんかくすぐったくもありますが素直に嬉しいですね。
海外の妙な日本食にしても、我々が過去に外国の料理に対してやってきた事を思えば(スパゲッティナポリタンとか)そこはお互い様で、笑って面白がるくらいでよいのだろうとおもっています

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プロフィール

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
↓小ネタはコチラ↓
https://twitter.com/inadashunsuke

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