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サイゼのマズさは良いマズさ

まだサイゼネタで引っ張るか、という話でもあるのだが、どうしても最後に一言付け加えておきたいことがあったので、贖罪の意味も込めてここで記しておきたい。
贖罪、というのは理由がある。
前回前々回と私はずっと「主力商品であるパスタやドリアは避けるべし」と言い続けた。
しかし私はそれらを決して憎んでいるわけではない。
むしろ愛していると言っていい。
無論、私はそれらを「とてもおいしい」と思っているわけではない。
しかしそれは言わば「好ましいおいしくなさ」だと思っているのも確かなのだ。

世の中の安チェーンやコンビニなんかには、確かにおいしいものもあるが同時においしくないものもずいぶんたくさんある。
そうやって世に溢れる安くておいしくないものの中で、サイゼリヤにおいての安くて(あまり)おいしくないものは少し毛色が違うような気がしている。
どう違うのか、そのイメージをお分かりいただくためにショートストーリーを用意した。
もしも一般的な激安チェーンとサイゼリヤがそれぞれ「つけ麺」の開発にとりくんだら、という仮定の物語である。

・一般的な激安チェーンの場合
「巷で流行りの濃厚つけ麺を商品化しましょう」
「そうしましょう」
「スープにたくさん豚骨や野菜を使うとコストが合いません」
「減らしましょう」
「煮干しをたくさん入れると好き嫌いが分かれます」
「減らしましょう」
「できました」
「物足りないですね」
「各種エキスを入れます」
「とろみがないですね」
「とろみがつくものを入れます」
「特徴が無いですね」
「さらにエキスを足します」
「それっぽくなりましたね」
「では販売開始」
「販売開始」。

・サイゼリヤの場合
「巷で流行りの濃厚つけ麺を商品化しましょう」
「そうしましょう」
「スープにたくさん豚骨や野菜を使うとコストが合いません」
「減らしましょう」
「煮干しをたくさん入れると好き嫌いが分かれます」
「減らしましょう」
「できました」
「物足りないですね」
「こんなもんです」
「では販売開始」
「販売開始」。


安さを追求すると、とかくなんらかの欠落が生じがちなものである。
飲食店に限らず食品メーカーなどの日本の企業は、その欠落を埋めることにその努力を最大限に傾けている印象がある。
ところがサイゼリヤはその辺りが妙にサバサバしている。
妙な背伸びをしない潔さみたいなものがある。
納豆に例えるならば、各社がいかに万人に好まれかつ印象的なタレをいかに安く作るかにしのぎを削っている傍で、「いいじゃん醤油で。家にあるし」とタレ無しの納豆を2円安く出す、みたいな感じだ。

かつてサイゼリヤの正垣会長は、サイゼリヤはすごく美味しいものを目指さない、そこそこでいいんだ、というような事を言ったという。
私はそれは妥協でもなければ諦めでもなく、もちろん自虐などというものでもないと確信している。
それは「みんなどこもしょうもない食べ物にゲタはかせて無理やり背伸びなんかするから世の中にはマズい物が溢れるんだ」みたいなある種のパンクスピリットだったのではないだろうか。
かつてセックスピストルズが虚飾にまみれた商業音楽を嘲笑ってスリーコードで勝負したように。

ピストルズは2分30秒のロックンロールで世界を変えた。
サイゼリヤは299円のミラノ風ドリアで世界を変えた。
少なくともそれだけは確かな事である。
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コメント

No title

「こんなもんです」で草w
しかしサイゼで食す度にこの「潔さ」を感じるのも事実
時に枝葉末節からドツボにはまる人へ贈るサイゼスピリットw

No title

前後編共に楽しく読みました。

前編のものは思わず試したのですが、青豆のサラダ・サラミ等々、勧められるまでは絶対頼まなかったであろうメニューが想像以上のおいしさで満足しました。(パスタやハンバーグなどのイメージが強すぎて料理にあまり期待していなかったのもありますが)

また、ワインも居酒屋ワイン程度が出るのかと思っていたらかなりおいしく満足できました。

ピザは結構酷評されてますが、マルゲリータのダブルチーズはワインと合って良い(そして他のサイゼメニューで代替がきかなさそう)と思うのですがいかがでしょう?

No title

ブログの方では初めまして。
イナダさんがアノ記事を書いてくれたおかげで、なんとなく疎遠になって10年近く経っていた友人の近況を知ることができました
(イナダさんがRTしていた六本木のサイゼリヤで宴会してた方々です。)

誰もがウィンウィンの素晴らしい記事でした。
サイゼリヤの新メニューが登場したり、ピザ生地がフォカッチャになったら更新版頼みます!

物足りないですね→そんなもんです。
このコンボのおかげで消費者側がぺこりーの足したり、オリーブオイル足してみたりという遊びの余地が生まれているような気もします。

No title

遅ればせながら試した。
あらびきソーセージうますぎ。
ネーミングから、子供の食べ物と思っていたが、ちがうぞこれ。

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プロフィール

イナダシュンスケ

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
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