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マクドナルドと私 (長い前置き)

ツイッターでたびたびマクドナルドを擁護してきた。
いや、擁護なんて言い方は失礼だな。
賛美してきた。
いずれにせよそれをする度にフォロワの数は減った。
ツイッターで私は食べ物に関する事しかつぶやかない縛りを自分に課している。
だからフォロワさんは基本的に食べる事に少なくとも人並み以上の関心と愛を持っている方がほとんどと言えるだろう。
そういう方たちにとって、マクドナルドは忌むべき物で、それを褒める奴など不快だし信用ならんというところか。

私がマクドナルドを選択する際の動機は2つである。
一つは簡便性。
仕事の合間、特に車での移動中に寄ってささっと食事をすませたい場合だ。
まさしくファストフードならではの便利さである。
そしてもう一つ、もっと重要なのが、
あ、肉。肉が食べたい。
という衝動に突き動かされた時である。
これは個人的な嗜好であるが、私の場合、肉が食べたいと思った時に焼肉が浮上してくる事はまずない。
そこはやはりステーキないしローストビーフである。
とは言え肉が食べたくなる度ごとにステーキやローストビーフを選択するほどのいろんな意味での余裕は、もちろん、無い。
そこでマクドナルドのクォーターパウンダーである。
より正確に言うと、クォーターパウンダーのケチャップ抜き、である。
この食べ物は、ステーキやローストビーフの10%程度の価格で、おおよそ25%(個人の感想です)の満足感を与えてくれる。
なんたるコストパフォーマンス!
少なくとも私にとっては極めて優秀な食べ物である。

そんなわけで私がマクドナルドで食べる物はほぼこのクォーターパウンダーケチャップ抜きと、それ以外は朝マックのソーセージマフィンくらいである。
そしてこの二つを食べる度に、これらがいわゆる「ジャンクフード」とカテゴライズされている事に対してどうにも釈然としない気持ちになるのだ。

ジャンクフードとは何か。
実はこれを考える事がマクドナルドに掛けられた濡れ衣(個人の認識です)の正体をあばく事になるのではないかと思うのである。

ジャンクフードという言葉のもともとの意味は、高カロリーで糖分や塩分が高く栄養が極端に偏った物、というような物であるらしい。
だが日本で「ジャンクな」と言うと少し違うニュアンスが付け加えられているような気がしないだろうか。
日本語の「ジャンク」は、栄養面の偏りよりむしろ「濃い味」を指して言われるニュアンスが強いと感じる。
味の濃さにもいろいろあるがジャンクと言われる場合のそれは、塩辛い、とか砂糖でやたら甘い、みたいな単一に近い濃さではなく、もっといくつかの味が複合された物が多い。
たとえばこってり甘辛い砂糖と醤油にニンニクと油が加わったような味だったり、塩味の濃いスープやスナック菓子に様々なエキス的な味とやはり脂が加わった味だったり。
そしてそれらは大体において「旨味」が重要なファクターになっている。

様々な味の要素を複合させて調和させるのは料理の基本であってそれ自体がジャンクと蔑まれる言われはないはずだ。
ただそのバランスがたまたまか意図的かは別として何かの要素が極端だったり、あるいは全体として過剰だったした時に、日本人はそれをジャンクと認定する傾向にある。
それは言うなれば快楽と隣り合わせの罪悪感であろうか。

味覚研究の第一人者、伏木亨教授によると、
人間は、糖類の甘味・脂肪の味・アミノ酸等の旨味
を好ましい味として知覚する。
そのうち2つが複合されると「やみつき」になるスイッチが入ることがあり、3つともが複合されるとその確率は格段に上がる
という事である。
これはなるほど、実感としてもよくわかる。
ジャンクな味とはまさにこれである。
実のところジャンクな味は誰もが快楽を感じる味なのだ。

しかし。
人間の味覚とは不思議な物である。
複合的な味覚に快楽を感じるシステムを生理的に備えているにもかかわらず、時にそれに反する物をむしろ好ましく感じるということが同時におこる。

焼き鳥は塩に限る
焼肉もまた塩ダレ
豆腐だって粗塩のみで
なんだったら生野菜も塩

ケースバイケースではあるが、こういうのが複雑に調味された物よりよっぽど美味しい、という事は確かにある。

塩厨、という言葉をネットで見た事がある。
何かにつけ塩だけの味付けが最上と主張したがる人々を揶揄した言葉である。
私はと言えば、焼き鳥や焼肉は頑としてタレ派であるもののステーキはソースを拒絶する事が多いしサラダも塩とは言わないが塩とは油と酢だけのヴィネグレットに限ると思ってるし、そもそもクォーターパウンダーのケチャップをわざわざ抜いてもらうくらいだから、充分に塩厨の資格があるのかもしれない。
少々不愉快である。

ともあれ塩厨が塩厨と揶揄されるのはそこに余計な物語を付与したがるからでかろう。
いわく「素材が良ければ塩が美味い。」
いわく「塩だけの方が素材の味わいを殺さない。」
それくらいならまだ一理あるとも言えなくもないから良いとして、放っとくとそのうち
「普通の塩はダメだが良い塩を使えば美味い」
などとスピリチュアルが絡み始める。
最後には、自分は味覚が優れているから塩だけのうまさを理解できる、なんて事までさりげなく主張しようとする。
ここまで来たら一種の病気であろう。

そのような物語の捏造までして理由付けする必要は無い。
事実はもっとシンプルなのである。

「人は複合的な調味に快を感じ、よりジャンクな味にやみつきになる生き物であるが、同時により単純な調味を好む事もある。」

それだけの事なのである。
そこに優劣の概念を持ち込む必要はない。

なので、ジャンクな味付けよりどちらかと言うとナチュラルな味付けをより好みがちな人々がいるというのはそもそも少しも不思議な事ではない。
仮にそういう人々をナチュラル派と呼ぼう。
ならば逆により複合的で過剰気味な味付けを好む、つまり本能的で健康的な文明の申し子達を(語弊は承知の上でわかりやすく)ジャンク派としよう。
念のために断っておくが、二派にはっきり分かれるという意味ではない。人間たいてい誰もがこの両方の要素を持っているしその境目はグラデーション的である。

随分と話が大回りしてしまった。
マクドナルドの話に戻ろう。
実際のところマクドナルドは、このナチュラル派の嗜好により近いレストランなのである。
コンセプトとか思想とかポリシーとかそういう話ではない。
あくまで調味に関するレシピ設計と純粋な味の好みの話である。
確かに期間商品やあるいは定番のテリヤキバーガーやたまに出てはすぐ消える狂気の産物のごときサイドディッシュの中には限りなくジャンク寄りな物もある。
しかしフラッグシップ商品のクォーターパウンダーにしてもその普及品としてのチーズバーガーにしても、ベーシックな商品は基本ナチュラルテイストであると言って決して過言ではない。
ポテトももちろんそうだし、あとこれは面白い事に、ナゲットだって競合他社やスーパー、コンビニのそれと比べるとダントツでシンプルだ。(個人的にはマクドナルド以外のナゲットには味付けの面であまりに過剰すぎる物が多いと思っている。)

ところが不幸な事にナチュラル派ほどマクドナルドを避ける。
なぜならばマクドナルドはジャンクフードの象徴だからである。
もちろん本来の定義から言えばそれは正しい。
が、その本来の定義で言えば、老舗の蕎麦屋で小柱のかき揚げと共にせいろを手繰るのもジャンクなら、鰻屋でうな重に肝吸いだって相当にジャンクである。
ちょっと想像してみて欲しい。
ナチュラル派のあなたはゆったりとした空気が流れる気の置けないビストロにいる。
軽い前菜の後、目の前にはいよいよメインディッシュの皿が来た。
赤身肉をシンプルに焼いた物にマスタードとコルニションが添えられている。
付け合せは定番のポムフリ。
パン籠にはまだパンも残っている。
これ、構成要素はクォーターパウンダーセットと全く一緒である。
もちろん各パーツには少しずつ(ただしパンだけは大幅に)差があるかもしれないが。
しかしはたしてこれをあなたはジャンクと呼ぶのか?

では逆にジャンク派にとってのマクドナルドがどうかと言うと、これはむしろ更に旗色が悪い。
なぜなら世の中にはよりジャンクな味わいの食べ物がいくらでもあるからだ。
いやむしろ世の中の飲食店の大半がマクドナルドとの比較においてジャンク寄りと言っても過言ではない。
たとえばよく比較対象とされるモ○バーガー。
複合的で過剰気味な味付けはこれぞまさにジャンクフードにふさわしいおいしさである。
多少高くても、味の好みを優先してジャンク派がこちらを選ぶのは無理のない事である。
にもかかわらずモ○を選択した彼はこんな事を言うのである。
「俺はマックみたいなジャンクフードなんて食べないよ。
少々高くてもこういうナチュラルな物を選ぶね。」

このいびつな構造がお分かりであろうか。
これが即ち今のマクドナルドを取り巻いている悲劇である。
世の中にはこの構造になんとなく気が付いている人も少なくないようで、マクドナルドはもっとジャンクの道を貫くべし、という意見を聞く事も少なくない。
しかし、あくまで個人的にであるが私はこれを望まない。
気軽に立ち寄れるジャンクな店はいくらでもある。
コンビニだってあるしそもそも安い店のほとんどはジャンクだ。
日本一気軽なナチュラルテイスト志向の飲食店としてマクドナルドは極めて貴重なのだ。
そこはあくまで今の路線を守り通していただきたいと願う私である。























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プロフィール

イナダシュンスケ

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
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