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マクドナルドと私 ep1 クォーターパウンダー2009

2009年のある日、私は仕事で来ていた埼玉県のとあるマクドナルドに居た。
全国販売が始まったばかりのクォーターパウンダーを食べるためにである。
正直、特別な何かを期待していたわけでもない。
話の種に、くらいの気持ちである。

カウンターで手渡されたそれは、さすが、ずしりと持ち重りがした。
テーブルについて箱の蓋を開ける。
ん?!
匂いからして普通のハンバーガーと違うんじゃないか?
手にとってかぶりつく。
驚いた。
うまいのだ。

ちょうどその少し前に、私は日本に上陸して間もないクアアイナでもハンバーガーを食べていた。
値段も値段だったし、ずいぶん待たされもした。
しかしなるほどここまで来ればハンバーガーというのも相当に美味いもんだなあ、と納得した。

初めてのクォーターパウンダーは、そのクアアイナに勝るとも劣らず、は言い過ぎなのかもしれないが、少なくともそれと同じ土俵で戦える美味しさだ、とその時思った。
しかも価格は半分以下である。

当時のマクドナルドは、すでにその凋落がささやかれていた。
実際のところ私自身もマクドナルドに来るのはかなり久しぶりであったし、少なくともその直近の数年は昔に比べると来店頻度は格段に落ちていた。
しかしこれなら、と私は思った。
また食べに行くことになってもおかしくないと思うし、私同様「マクドナルド離れ」をおこしていた大人たちがまた一斉に戻って来るのではないか、と。
マクドナルドとしてもそういう目論見であっただろう。
まさに反撃ののろし、である。
しかし皆様ご存知の通りそうは問屋がおろさなかったのだが、それはまた別の物語。またいつか話そう。

ところでその時。
私がクォーターパウンダーを食べて一番驚いたのは実は玉ねぎである。
なんと玉ねぎが生だったのである。
いやちょっと待て、普通のハンバーガーやチーズバーガーにも生の玉ねぎは入っているだろう、と思う人もいるかもしれないが、実はあれは生といえば生なのだがフリーズドライである。(多分そうである。間違ってたらごめんなさい)
細かく刻まれており、多少の食感はあるが辛味は飛んで風味も頼りない物である。
クォーターパウンダーの玉ねぎはフレッシュのものがザクザクとラフにカットされていた。
かじり当てればツン、と辛味も立つワイルドな状態である。
それがこれまたワイルドな匂いと味わいのパテに恐ろしくマッチしていた。
たかが玉ねぎと思うかもしれない。
しかしこの玉ねぎは「クォーターパウンダーのためだけに」店にストックされているのである。
飲食店は、いかに少ない種類の食材で多くのメニューを作るかが勝負である。
普通に考えれば、玉ねぎなら普段使っているフリーズドライのそれをそのまま流用するだろう。
安くてハンドリングがよく鮮度もそれほど気にしなくていいし、季節やロットによるバラツキもない。
辛い、食べづらい、というクレームも気にしなくていいのである。
アボカドバーガーのためにアボカドを仕入れます、というのとはわけが違うのだ。
効率化を度外視した、しかも一般客にはちょっと伝わりづらいこだわりである。
私は玉ねぎにマクドナルドの本気を見た。

つい熱くなって玉ねぎの事ばかり長々と書いてしまったが、肝心なのはもちろんパテである。
私は最初このパテは単に大きいだけでなく、材料の選別から何から通常のパテとは別物という印象を受けた。
明らかに肉の肉らしい味は濃く、匂いもそれまでマクドナルドではあまり感じた事のない官能的な物であった。
ところが公式情報のどこにもそんな事は書いてない。
世間でも、あれは単にサイズが2.5倍になっただけと認識されているようだった。
後日私は確認のためにダブルチーズバーガーを食べてみた事がある。
肉の量だけで言えば2割程度しか変わらないはずである。
そして件の玉ねぎを除けば構成要素は同じである。
しかしその二枚重ねのパテの味わいは全くもってクォーターパウンダーのそれとは異なる、ごくおとなしいものであると感じた。
真相はどうなのであろう。
サイズの違いだけであそこまではっきりとした違いが出るというのならそれはそれで料理とは奥の深いものだ、という話でもあるし、また、マクドナルドはクォーターパウンダーという商品によって、そのパテの潜在的なスペックをより高いレベルまで引き出すというカードを手に入れたとも言える。
しかし私個人としては、やはりそこは原材料から別物という見解に軍配を上げたい気はする。
玉ねぎなどという目立たぬ所にしっかりコストをかけたこの商品、であれば肝心のパテに何らかの特別仕様を施すのはむしろ自然だと思うのだが、皆様はどう思われるだろう。

別物、と言えばバンズに関しても少し触れておかねばならないのかもしれない。
クォーターパウンダーのゴマ付きバンズは、正直それほど美味しいものではないと思う。
もちろんそれはパン単体として食べるものではないし、バーガー全体としてはちゃんと美味しい食べ物として成立しているのでそれをどうこう言うべきではないのかもしれない。
ただ、このバンズがもっと美味しければ(そのために数十円程度の価格上昇はやむを得ないとして)どれだけさらに美味しくなるだろうという夢想くらいは許して欲しい。
そしてマクドナルドのハンバーガーやチーズバーガーに使われる、ゴマの付いてないレギュラーバンズである。
これがクォーターパウンダーのゴマ付きバンズ以上に不味いと感じるのは私だけであろうか。
これに関しては私もそれほど自信がない。
そもそもこちらはめったに食べないし、並べて食べ比べたわけでもない。
これもネットをあさる限りでは、生地は同じでゴマの有る無しの違いでしかないことを暗に示唆するような情報しかないのだが。
しかし気まぐれで稀にチーズバーガーを食べるたび、
うわーパンまっずー、
それもあって全体的にまっずー、
と思ってしまう私がいることだけは確かである。
そのあたり事情通の方がいらしたら、どうか真相を私にこっそり教えていただけないだろうか。
伏してお願い申し上げる次第である。

とまれ私はその埼玉の店に、予想通り数日後再訪する事になる。
前日に天啓のように閃いたある一つの企みと共に。
順番が来て私はオーダーカウンターの前に立った。
「単品で、クォーターパウンダーとアイスティー下さい」
そして続けた。
いよいよだ。
いよいよその企みを実行する瞬間が来たのだ。
「クォーターパウンダーはケチャップ抜きでお願いします」。

話は唐突に飛ぶが、私は料理人としてアメリカ人に料理を提供するという機会がこれまでにも度々あった。
感情表現が豊かでフレンドリーな彼らは、割と日本人よりフランクに料理を褒めてくれる。
親指を立ててウインクをしながら、good とか berry good などと。
粋なもんである。
その中でも最上級はこんな感じである。
食べ終えた、あるいは食べかけの皿の上に彼はその大きな手を90度に広げる。
そしてゆっくり瞬きをしながら顔を小刻みに左右に一往復。
そして目を見開き充分にためを効かせて一言。

" Perfect ! "

私は僥倖にしてこのような栄誉に数回出会えた事がある。
その度に深い満足感と喜びを感じた。
料理人冥利に尽きる、というやつである。

話は戻る。
数分後にカウンターで受け取ったそれは、もはや懐かしいとも言える重さをたたえていた。
しかも。
それはただのクォーターパウンダーではない。
クォーターパウンダーケチャップ抜きである。

イオンのフードコートならではの開放的な窓際のカウンター席に腰をおろし、箱を開ける。
かぶりつく。
かぶりつく。
かぶりつく。
来た。
今だ。
ついにあのアメリカ人たちにささやかすぎる恩返しをする時が来たのかもしれない。
さすがに背後のオーダーカウンターに踵を返して、シェフを呼べい、などという狼藉を働くわけにもいかないが。
そのかわりに私は目を瞑って心の中で呟いた。

「パーフェクト!!」




おわり






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コメント

Twitterから訪問させていただきました。勝手にフォローさせていただいてます、あうあ~qと申します。僕はインドカレーが大好きで色々食べ歩いてます。特に好きなところは、検見川のシタールと八重洲のダバインディアです。先日、イナダ様が書かれた、曳舟の猫六も趣き、おいしいキーマをいただきました。ありがとうございました。

さて、今回のマックのクオーターパウンダーの記事も拝読致しました。すごく熱く語られていて楽しめました。私もマックの中では確かにクオーターパウンダーが好きなのですが、ただ私はもっと好きな店があります。Becker’sという関東のチェーン店です。そこで提供される「別格」の種類のハンバーガーは今まで食べた中で私は一番好きです。もし、イナダ様がまだ食されておりませんでしたら、ぜひ一度お試しいただければと思います。

これからも、Twitter、ブログ楽しみにしてます。


Re: タイトルなし

ベッカーズは何度か見かけた事はありますが入った事はないです。
機会があればうかがってみたいと思います。
ありがとうございました!

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プロフィール

イナダシュンスケ

Author:イナダシュンスケ
業態開発とメニュー開発を中心に飲食店の雑用全般。enso / Erick south / Erick curry などなど。
ただしこのブログは完全プライベートであります。
偏り気味の食文化論、役に立たない食べ物ウンチク、飲食店の愉快でトホホなリアルライフ、そしてたまにはヒット数稼ぎの阿漕なレシピ公開、好きなものを好きと言うだけの中身の無い雑談、などをだらだらと垂れ流す予定です。
↓小ネタはコチラ↓
https://twitter.com/inadashunsuke

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